2017年05月06日

イェームバード blueavians

イェームバード blueavians

イェームバード
雑誌で目にしたマックス・クリスチャンセン氏の
インタビュー記事にあった“青い翼の鳥人”という一文より
父にその姿をイメージしてもらいました。
有田の上絵の具は青系の発色が特に美しく、色数も多いので、
青を活かすモチーフのことはいつもどこかで考えています。



さて・・・
今までこの絵をネットに載せるのはなんとなく控えていました。
「これは何の絵?」という質問にうまく答えられなかったからです。

この翼のある人の絵が何の姿を現しているのか、
なんとか言葉で説明しようとすればするほど、
自分にとっては聞きかじりの言葉を並べなくてはならず、
それはどうもあまり心地よいことではありませんでした。



私はいつも絵について人に尋ねられたことには、
できるだけありのままに答えているつもりです。

どうやってつくるの、と聞かれれば陶板と画材の見本をだして
ああしてこうしてつくります、と答えますし、

どうして猫や子供を描くの、と聞かれれば、
そこに至ったエピソードをお話します。

そうやって問われ、答えて、
ああそうなの、と納得してもらうのが、
誠実なサービスだと思っていたのですが・・・

でもそれは本当は少し、もったいないことをしているのかも
と思うようになりました。

初めて目にする、心動かすものに出会って、
わあきれい、これはなんだろう?という気持ちが芽生える、

それは大人にとって実はとても得難く大切な機会ではないでしょうか。

なのにその場に作者がいたばっかりに、
これは何かと問うて、はいこれは陶彩画といって云々という
インスタントなやりとりをしてしまう。

心の動きに答えらしきものが与えられてしまえば、
せっかくの感動は単なる知識になって、頭の中の仕分け棚に入れられておしまい。

これは私ももちろんそうなのですが、
現代社会では、抱いた疑問や、自分の心の動きに、ゆっくり向き合う
じっくり観察して、考える、というような習慣や時間をなかなかもてません。

初等教育のころから、知識を頭に詰め込むことを善しとされ、
何かを疑問に思えば、すぐスマートフォンで検索をかけて答えをひきだします。
豊かで効率的で便利で、それはそれで世の中が進んでいいことだなと思うのですが・・・、

ただ、五十嵐大介の「魔女」という漫画のなかにこういう場面があります。

大きな書庫のなかで本を見る少女、
彼女を育てている女性はこう言います
「本を読んではいけないって言ってるでしょう」
「どうして?」

「あんたには経験が足りないからよ、

“体験”と“言葉”は同じ量ずつないと、心のバランスがとれないのよ」

そして少女は手作りのかんじきをもらって、雪の積もる森の散策にでかけます。



体験 と 言葉

自分で感じたこと考えたこと と 自分以外から学んだ知識

自分の中から湧いてきたもの と 他者から受け取ってそのまま使っている概念、慣習・・・

自分の言葉 と 他人の言葉

色々言い方はあると思いますが、
自分のなかにある両者のバランスが、とれていますか?
そのことについて考えてみたことすらなかったなんてことは、ありませんか?

疑問には即、答えをあてはめるというルーティンに慣れきっている私達には、

自分の目で見たこと、心が動くことを、そのまま大切にする、
ということの方に訓練と忍耐が必要です。


心が感じたことをすぐに言葉にしてしまうと、
色んなものを取りこぼしてしまうかも知れません。

私達の感覚は、無辺の世界から言語化できないたくさんの情報を受け取っているはずです。

言葉にならない世界を、そのまま受け入れて、
つきあっていけるようになりたいと、私はそう思います。
理性と科学に偏った運営に行き詰まりの兆しが見え始めたこの社会で、
次に必要になるセンスはきっとそういうものなんじゃないでしょうか。

ちょっと話が壮大になりましたが・・・、

だから、「これは何の絵?」という疑問に、私は答えないことにします。

この絵が何の絵で、どんなメッセージをもっているのかは、
言葉ではなく、自分の心で感じてみてください。




今週末までの個展で飾ってます。


矢山昭子 陶彩画展

有田焼の技法から生まれた新しいアート「陶彩画」
今までにない陶の絵の可能性をご覧ください。

2017.5/2(火)~5/7(日)
AM11:00~PM15:00

〒840-0201
佐賀市大和町尼寺3071-1
tel 0952-62-5941
そば処 いち 併設ギャラリー













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Posted by かぎ猫屋 at 00:49 | 陶彩画